ヒント9 - マンションリフォーム
マンションのリフォームをする場合には、区分所有法や、マンション管理規約というものが関ってくることを知っていますか?
戸建て住宅のリフォームでは建物の面積や、外装等の制限に注意する必要がありますが、マンションのリフォームでは、建物のどこまでが個人の所有なのかを定めた区分所有法や、そのマンションごとに定めたマンション管理規約が、工事のできる範囲や内容に大きく影響してきます。
事例1:窓ガラスをペアガラスにしたい
マンションに住むXさんは、冬の窓ガラスの結露に悩まされていました。
結露の水滴でカーテンも濡れ、かびてしまうこともありました。汚れが気になってきた壁や天井の仕上げをリフォームするついでに、窓ガラスも結露防止に効果的なペアガラスに取り替えたいと思いました。
このことを、マンションリフォームマネジャーの有資格者である業者の人に相談しところ、窓ガラスは専用使用権が認められていますが、共用部分なので管理組合の許可なしに勝手に取り替えることはできないということでした。そして、ペアガラスにはできませんが、結露防止対策として現在のサッシの内側にもうひとつサッシを設け、内装材には調湿性(湿気を吸収したり放出する性質)のある自然素材にしたらどうかと提案されました。そこで、実際の工事では、結露する窓にインナーサッシを取りつけ、壁・天井には珪藻土を塗りました。
また、新しくなった壁や天井の雰囲気に合わせて、玄関ドアもリフォームしたいと思いましたが、玄関ドアは共用部分なので取り替えることはできません。そこで居室側のドアの色を塗り替えて、統一感のある室内にしました。
【ポイント】
マンションの窓と同様にバルコニーも専用使用権が認められている共用部分です。ふだんは自由に使うことができますが、火災などの非常時には避難経路となることもあるので、私的なリフォームはできません。
事例2:床の仕上をフローリングにしたい
マンションの3階に住んでいるYさんは、子どもが喘息(ぜんそく)気味なのでカーペットの床をフローリングの床に変えることにしました。リフォーム業者に相談すると、床仕上げのリフォームについてはマンションの管理規約で決められた事項を確認する必要があるということでした。そこで、管理規約を調べると、リフォーム工事にあたっては届出が必要なこと、床仕上をフローリングにする場合は、遮音等級LL―45以上を確保し、上下階の近接住戸の承諾を得る必要があるということがわかりました。
また、Yさんはシックハウスが気になっていたので、無垢のフローリングを希望していましたが、無垢材の直貼りでは管理規約で定めている遮音性能が得られないことが判りました。そこで、ホルムアルデヒドの発散量が最も少ないレベルの、遮音等級つき合板を使うことにしました。また、子どもが成長すると階下への音も今以上に気にしなくてはいけなくなると思い、LL―45よりさらに遮音性能の高いLL―40のものを使うことにしました。。
【ポイント】
管理規約で、床仕上げの遮音性能等を定めたマンションもあります。その決まりは個々のマンションによって違っていて、必要な性能が遮音等級で決められている場合や、床仕上げにはカーペット以外の素材を使用してはいけないといった決まりを設けている場合もあります。
【フローリングの遮音等級と性能】
遮音等級 | LL-60 | LL-55 | LL-50 | LL-45 | LL-40 |
---|---|---|---|---|---|
足音など | やや気になる | 少し気になる | ほとんど気にならない | 聞こえるが気にならない | 遠くから聞こえる感じ |
落下音など | 箸を落とすと聞こえる | スリッパでも聞こえる | ナイフなどは聞こえる | サンダル音は聞こえる | ほとんど聞こえない |
生活音、 プライバシーなど | お互いに我慢できる程度 | 注意すれば問題ない | やや注意して生活する | 少し気をつける | 気がねなく生活できる |
事例3
Z氏は10階建てマンションの5階に住んでいます。最近、水廻りの設備が老朽化してきたので、リフォームすることにしました。浴室の面積を今までより広くし、窓の外も眺められるようにしたいと思い設計事務所に相談しました。
水廻りの位置を移動したり、面積を広げたりする場合は、共用部分である排水縦管までの必要な水勾配を取ること、階下の住戸に排水音が伝わらないようにすることなど、マンション特有の注意事項があります。さらに、マンションの築年数に応じ、専有部分である住戸内の横引配管は、リフォーム時には新しいものに更新する必要があると、管理規約によって定めている場合もあるので、管理組合への確認も必要です。
それらの条件を満たしたうえで、希望に添ったプランを検討し、工事を行いました。そして、施工後は新しい配管の図面も書いて管理組合に提出しました。
【ポイント】
排水方法には、床上配管、床下配管、およびスラブ下配管があります。排水縦管など共用部分の配管は個人のリフォームにあわせて移動することはできません。縦管に不具合があって改修が必要なときは、管理組合の承諾が必要です。