耐震のヒント3-リフォームと一緒に行う耐震改修
リフォームと耐震補強を同時に相談(Yさん宅の場合)
Yさん宅は、築30年の木造2階建。家族の増減や暮らし方に合わせて、今までに増改築等のリフォームを3回してきました。4回目になる今回のリフォームでは、汚れの目立ってきたリビングダイニングの壁や天井のクロスを剥がして、しっくいの仕上げにすること。さらに外壁のモルタルも傷んで汚れてきたので、補修してきれいにすることを計画していました。
また、築30年という古さから、耐震性のことも気になっていました。そこで、リフォームを担当する建築士に相談したところ、リフォームと一緒に耐震補強をすると良いとのことだったので、耐震診断を行い、耐震性を向上させる工事もあわせて行うことにしました。
工事箇所と方法
担当した建築士は、耐震改修を視野に入れて、建物の現状をチェックします。居間の壁を張り替えるのため仕上げや下地を撤去したり、図面などをみて、筋かいの入っていない壁を確認。壁の補強は、筋かいを入れ、金物でしっかり留め、構造用合板を張り、耐震性をもたせました。補強した壁は1階で9カ所におよび、全体をみながらバランスよく配置しています。
さらに、木材が傷みやすいトイレの壁を叩いてチェックすると、他の壁の音と違うことを発見。そこで、室内から一部仕上げをはがしてみたのですが原因が分からず、外壁も撤去してみると、中の柱がボロボロになっていました。シロアリの食害にあっていたので、叩いた音が違っていたのです。外壁をサイディングに替える工事の前に、この部分の柱2本と土台を、食害防止のための薬剤処理をした部材に交換するとともに筋かいを入れ、この部分の食害対策、耐震補強を実施しました。
コラム:耐震性を損なう食害を防ぐ
木造住宅の場合、いくら耐震性のある壁がバランスよく配置されていても、シロアリや木食い虫の食害にあっていたのでは、なんの意味もありません。シロアリや木食い虫が好むのは、暗くて湿気がたまりやすいところなので、食害を防ぐためには床下や小屋裏は要注意です。室内でも、浴室やトイレなどは、湿気が多いところなので、食害が発生しやすく、調査するときには必ずチェックしなければなりません。
食害というとシロアリがすぐ思い当たりますが、木食い虫の被害も見過ごせません。シロアリは木の中を食べるので、姿が見えなければ被害が分かりにくいのに対し、木食い虫は木の表面から食べてしまいますので、被害は一目瞭然。
食害にあうと、木はスカスカのスポンジ状になってしまうので、いざ地震となれば、少しの揺れでも住まいは甚大な被害を受けます。しかもシロアリや木食い虫は食べる木を選びません。独特の匂いを発し、あまり食べないと思われているヒノキは大好物ですし、固いクリの木も食べてしまいます。例外的に国産のヒバのみ、食べないという調査もありますが、このヒバを住まいの構造材に使うことはほとんどないでしょう。食害にあわないためにも、土台は正規の安全な防腐・薬剤処理をしたものを使い、小屋裏や床下など、湿気がたまりやすいところは、年1回程度点検してください。万一被害にあっても、早めに対処すれば被害を最小限にくい止めることができます。