民法における瑕疵担保責任

民法では、請負者(事業者)の仕事に瑕疵があった場合に、請負者(事業者)が負うべき責任について、634条から640条にかけて規定をおいています。請負者(事業者)の瑕疵担保責任といいます。以下、この規定につき、簡単に解説します。

634条
仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。2 注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第533条の規定を準用する。

 1項は、瑕疵の修補請求権についての規定です。  リフォーム工事の成果について、瑕疵があるときは、注文者(消費者)は相当の期間を定めて、請負者(事業者)に対し、瑕疵を補修するよう求めることができます。
 瑕疵とは、簡単にいえばリフォーム工事に不完全な点があることを言います。
 この修補請求権には、例外があります。それが、1項但書です。瑕疵が重要でなく、かつ、その補修に過分の費用がかかるときは、補修を求めることができません。この場合は、損害賠償請求のみができることになります。
 「重要」か否かは、契約の目的、目的物の性質その他客観的事情により定まります。「過分」か否かは、補修に必要な費用と補修によって生ずる利益を比較して定めると言われています。しかし、リフォームにおいて、どんな部分が「重要」で、いくらかかれば「過分」であるということを、公式に数字をあてはめるように示すことはできません。実際の事例においては、専門家に相談することをお勧めします。

 注文者(消費者)は瑕疵修補請求権がありますが、1.瑕疵修補を請求しないで、その代わりに損害賠償請求をすることができること、2.瑕疵修補請求をしても、なお填補されない損害があるときは、瑕疵修補と併せて損害賠償請求ができることを、2項は定めています。
「この場合においては、第533条の規定を準用する」というのは、注文者の損害賠償請求権と請負者(事業者)の報酬請求権は、同時履行の関係にたつという意味です。
635条
仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができる。ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない。

 リフォーム工事に瑕疵があれば、注文者(消費者)はその補修の請求ができるわけですが、その瑕疵があると、リフォーム工事の目的が達成できないときは、注文者(消費者)は契約の解除をすることもできます。
 この解除権については、「建物その他の土地の工作物については」行使できないとされています。リフォーム工事は、建物内における内装工事等が主なものであり、リフォーム工事の多くは、この解除権の制限規定には該当せず、解除できると思われます。しかし、リフォーム工事のなかには、建て増しのような場合もありますので、この解除権の制限規定に該当するか否かは、専門家にご相談ください。
636条
前2条の規定は、仕事の目的物の瑕疵が注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じたときは、適用しない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。

 634条及び635条により、注文者(消費者)は請負者(事業者)に対し、瑕疵修補請求権、損害賠償請求権及び契約解除権が与えられています。
 しかし、本条は、リフォームの瑕疵が、1.注文者(消費者)の提供した材料、若しくは2.注文者(消費者)の指図、によるときは、これら注文者(消費者)の権利が、発生しない旨定めています。ただし、以上の場合でも、請負者(事業者)が上記2点が不適当であることを知りながら、そのことを注文者(消費者)に伝えていないときは、原則に戻り、注文者(消費者)は請負者(事業者)に対し、瑕疵修補請求権、損害賠償請求権及び契約解除権を行使することができます。
637条
前3条の規定による瑕疵の修補又は損害賠償の請求及び契約の解除は、仕事の目的物を引き渡した時から1年以内にしなければならない。2 仕事の目的物の引渡しを要しない場合には、前項の期間は、仕事が終了した時から起算する。

 634条から636条に定めた注文者(消費者)から請負者(事業者)への各種権利の行使期間につき、定めています。
 1項は、仕事の目的物を引渡してから1年以内に行使しなければならないと定めています。
 2項は、1項と異なり仕事の目的物の引渡を要しないときは、仕事の終了から1年以内に行使しなければならないと定めています。
638条
建物その他の土地の工作物の請負人は、その工作物又は地盤の瑕疵について、引渡しの後5年間その担保の責任を負う。ただし、この期間は、石造、土造、れんが造、コンクリート造、金属造その他これらに類する構造の工作物については、10年とする。2 工作物が前項の瑕疵によって滅失し、又は損傷したときは、注文者は、その滅失又は損傷の時から1年以内に、第634条の規定による権利を行使しなければならない。

 土地の工作物の瑕疵に関する規定です。
 土地の工作物については、工作物の引渡後、請負者(事業者)は5年間瑕疵担保責任を負います。ただし、その工作物が鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造の場合は、5年ではなく、10年としています。637条では、権利行使期間を1年としているところ、本条でその期間を延長しているのは、土地の工作物については、ある程度期間が経過してから、瑕疵が発見されることがあるからと説明されています。
 リフォームが「土地の工作物」に該当するか否か(すなわち、契約を解除できるか否か)は、635条のところでも触れましたが、具体的なケースにおける判断ですので、専門家に相談されることを勧めます。
 以上が原則ですが、工作物が滅失または毀損したときは、そのときから1年以内に権利行使をしなければいけません。これは、滅失または毀損という事実があれば、瑕疵の存在は明瞭となるからであると説明されています。
639条
第637条及び前条第1項の期間は、第167条の規定による消滅時効の期間内に限り、契約で伸長することができる。)

 当事者の契約で、瑕疵担保責任の存続期間を延長する場合の制限についての規定です。
 瑕疵修補請求、損害賠償、解除権の行使いずれについても10年までは、存続期間を延長することができます。
640条
請負人は、第634条又は第635条の規定による担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることができない。

 請負者(事業者)の瑕疵担保責任を免除する特約も有効です。ただし、その場合でも、請負者(事業者)が瑕疵の存在を知っていたのに、そのことを注文者(消費者)に伝えなかったときは、請負者(事業者)は瑕疵担保責任を負います。
 因みに、瑕疵担保責任を免除する特約が有効ですので、瑕疵担保責任の存続期間を短縮する特約も有効です。
 このように瑕疵担保責任を軽減・免除する特約は有効ですが、無効となる場合もあります。その1例として、住宅の品質確保の促進等に関する法律に抵触する場合を挙げることができます。この法律は、新築住宅に関するものですから、リフォーム工事については適用はありませんが、参考までに、以下説明します。
 同法87条は、新築住宅の請負契約においては、構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分で政令で定めるものについては、1.引渡しから10年間請負者(事業者)は民法634条1項及び2項前段の責任を負うこと、2.この責任については、当事者間で特約を結んでも、注文者(消費者)に不利なものは、無効と定めています。
 瑕疵担保責任の存続期間を短くすることは、注文者(消費者)に不利ですから、このような特約は、無効となるわけです。
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