耐震のヒント2-耐震改修の3つの基本

耐震診断結果をふまえて工事へ(Sさん宅の場合)

Sさん宅は、築26年の木造住宅です。だいぶ古くなってきたので、もしここで大きな地震が起きたらどうなってしまうのだろうと、住まいの耐震性が気掛かりでした。知り合いの建築士に相談したところ、耐震診断および改修に詳しい専門家にみてもらうことを勧められ、専門家に耐震診断をしてもらうことにしました。一般診断法で診断を行った結果、Sさんの心配は的中し、評点は0.7で、大きな地震がくれば「倒壊する可能性がある」という判定でした。この結果を受けて、さっそく耐震のための補強工事を行うことにしました。

耐震診断結果をふまえて工事へ

工事箇所と方法

1979年に竣工したSさん宅は、新耐震基準改正(1981年)前の建物です。一般に既存の建物を耐震補強する場合、基礎部分を補強したり、壁を増やしてバランスよく配置したりといった方法がとられます。耐震診断によって、Sさん宅では、1階の南北方向の壁の量や強度が不足していたことが分かったので、その部分を補強することになりました。
改修工事を行う前には、まず、どこをどのように補強するかという耐震改修のための設計をします。そして、それによってどの程度耐震性が高められるかを、再度、確認します。Sさん宅の場合、改修工事によって、評点が1.0、つまり「一応倒壊しない」という結果になることがわかりました。
そこで設計通り、まず大きな部屋となっているリビング・ダイニングの東西の壁は、筋かいを入れて金物でしっかり留め、壁全面に構造用合板を張って補強しました。リビングとキッチンの間も、新たに耐震性のある壁を設けたり、洗面所の窓だったところも壁にするなど、1階の壁をバランスよく配置して、住まい全体の耐震性を高めました。
壁の補強や増設とともに、リビングダイニングの壁仕上げの張り替えや、傷みが目立っていた浴室のタイルの補修を合わせて行うことで、安心して気持ちよく暮らせる住まいになりました。

工事箇所と方法

改修の3つのポイント

木造住宅では主に、壁の強度を補ったり、新たに壁をつくることによって、建物全体の耐震性を高めることができます。この壁の構造については、補強や新設に関わらず、一般的に次の3つのことがポイントになります。
まず1つは筋かいを入れること。筋かいは、柱と柱の間に斜めに入れた角材のことで、地震の際に建物にかかる横方向の荷重に抵抗する働きがあります。

改修のポイント1

2つめは木材と木材を金物でしっかりとつなぐことです。昔は釘や鎹(かすがい)などで留めていましたが、現在はさまざまな形の金物と、釘やねじが組み合わせて用いられます。これによって、柱と梁、土台と柱、梁と筋違いなどをしっかりと固定し、つなぎの部分が簡単にはずれないようにします。この金物はいろいろな種類のものがありますが、JISマークかZマーク※がついたもの、もしくは同等品を使うとよいでしょう。

改修のポイント2

※Zマーク金物:「財団法人日本住宅・木材技術センター」が承認または同等認定する金物のことです

筋かいを入れ、適切な金物で木材同士をきちんと結合すること、もしくは構造用合板を張るという方法は、比較的安価で施工上の間違いが少ないというメリットがあります。しかし補強する場所などの条件によって、こうした一般的な方法がとれず、特殊な工法を採用することもあります。そのような場合には、難しいことは素人には分からないと諦めず、できるだけ工事内容を確かめ納得の上で工事を進めるようにしましょう。

改修のポイント3
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